紙のサイズ規格 A4・B5・Letter の数学 ― √2 比とリヒテンベルク 1786 年の手紙
NGENERAL
その他(更新: 2026-09-03)9 分で読める

紙のサイズ規格 A4・B5・Letter の数学 ― √2 比とリヒテンベルク 1786 年の手紙

会議資料を A4 で印刷して 2 つ折りにすれば、ほぼ A5 サイズになります。そのまた半分は A6、もう半分で A7。「半分にしても同じ縦横比を保つ」性質は、A系列が採用する √2 比 (約 1.414)から生まれます。紙とこの比の現存する早い記録が、1786年にドイツの物理学者ゲオルク・リヒテンベルクが書いた手紙です。ただし彼が近代規格を制定・発明したわけではありません。本記事では手紙の実際の内容、1798年のフランス法、DIN 476、ISO 216を区別しながら整理します。

#紙#A4#B5#ISO 216#DIN 476#リヒテンベルク#√2#Lichtenberg#印刷#規格

A4 を半分に折ると A5 になる「魔法」

A4 用紙の寸法は 210 × 297 mm。これを長辺の真ん中で半分に折ると、できる長方形は 148.5 × 210 mmですが、A5 の規格寸法は 148 × 210 mmです。丸め前の理論寸法では、次のサイズも縦横比を保ち、面積が半分になります。規格寸法は整数 mm に丸められるため、実寸の縦横比と面積はこの関係からわずかにずれます。A6 は 105 × 148 mm、A7 は 74 × 105 mmです。

これは偶然ではなく、そうなるように設計されているのです。ISO 216 が規定する A 列と B 列は、長辺と短辺の比が √2 : 1 (約 1.4142 : 1) になる体系です。封筒用の C 系列も同じ比を使いますが、ISO 216 ではなく、撤回済みの ISO 269 など関連規格で扱われてきました。

表が収まらない場合は、左右にスクロールできます。

サイズ 寸法 (mm) 理論上の面積 (m²) 用途
A0841 × 11891.000ポスター、製図 (基準サイズ)
A1594 × 8410.500ポスター、図面
A2420 × 5940.250大判ポスター、新聞
A3297 × 4200.125設計図、表組み資料
A4210 × 2970.0625ビジネス標準、コピー用紙
A5148 × 2100.03125小冊子、ノート
A6105 × 1480.0156文庫本、ポストカード
A774 × 1050.0078小型メモ、カード

A 列は「A0 の理論面積を 1 平方メートル」として、そこから半分にしていく体系です。規格寸法は整数 mm に丸められるため、841 × 1189 mm の実面積は 0.999949 m²、210 × 297 mm の実面積は 0.06237 m²です。表の面積は丸め前の理論値で、実寸からの積とはわずかに異なります。なお、日本郵便の通常はがきは 100 × 148 mm で、105 × 148 mm の A6 とは別寸法です。

1786 年: リヒテンベルクの手紙

紙の寸法に √2 比を使う発想について、現存する最古の記録とみられるものが、ドイツの物理学者・著述家 ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク (Georg Christoph Lichtenberg, 1742-1799) が 1786 年 10 月 25 日にヨハン・ベックマンへ宛てた手紙です。Markus Kuhn が原文と英訳を公開しています。

手紙によると、リヒテンベルクは教え子に「半分にしても各判型が相似になる紙」を求める代数問題を出しました。比を求めた後、手元の普通の便箋を切ろうとすると、その紙がすでに 1:√2 に近いことに気づきます。そこで、製紙用の型に規則があるのか、伝統なのか、この形はどこから来たのかをベックマンへ尋ねました。近代的な紙規格をこの手紙で提案した、という内容ではありません。

また、Markus Kuhn の調査では、フランス政府がメートル法導入後の 1798 年 11 月 3 日に公布した紙の課税法にも、現代の A2、A3、B3、B4、B5 などに対応する寸法が現れます。この系列は広く定着せず忘れられ、ドイツで後に独立して同じ設計原理が標準化されました。

なぜ √2 比だと半分にしても比率が変わらないのか ― 数学的証明

長方形の長辺を L、短辺を W として、長辺 : 短辺 = r : 1 とします (つまり L = rW)。 これを長辺の真ん中で半分に折ると、新しい長方形の寸法は:

  • 新しい長辺 = 元の短辺 = W
  • 新しい短辺 = 元の長辺の半分 = L/2 = rW/2

新しい長方形の比 (長辺 / 短辺) は W ÷ (rW/2) = 2/r です。元の比 r と同じになるためには:

r = 2 / r
r² = 2
r = √2 ≈ 1.41421356...

つまり、長辺 : 短辺 = √2 : 1 の長方形だけが、半分に折っても比率を保てる唯一の比です。これは「無限に半分にしていっても、いつまでも同じ形」という美しい自己相似性 (フラクタル的性質) を持つことを意味します。

補足: 黄金比 φ ≈ 1.618 の長方形は、長辺側から正方形を切り取ると残りが元と相似になる、という別の自己相似性を持ちます。一方、半分に折って相似になる比は √2 です。

1922 年: ヴァルター・ポーストマンと DIN 476

リヒテンベルクの手紙から 136 年後の 1922 年、ドイツの技術者 ヴァルター・ポーストマン (Walter Porstmann) がまとめた体系が、DIN (ドイツ規格協会) の DIN 476 として標準化されました。これが現代 ISO 216 の直接の母体です。

DIN の公式資料によれば、DIN 476 は 1922 年 8 月 18 日に公表され、ポーストマンは A 系列を基礎とする統一規格を推進しました。実用上の要点は次の通りです:

  • A0 = 1 平方メートル: 紙の重量計算 (1 g/m² の坪量 × 面積) と直結する基準
  • 系列化: 同じ縦横比を保ちながら、用途に応じて段階的な寸法を用意

この寸法体系はその後、欧州をはじめ各国の規格へ広がり、ISO 216 の基礎になりました。国ごとの採用年は資料によって扱いが異なるため、ここでは裏付けられない個別年表を置きません。

1975 年: 国際標準 ISO 216 として世界へ

DIN 476 で先行した A 列・B 列の設計原理と寸法は、1975 年に初版が発行された ISO 216「Writing paper and certain classes of printed matter — Trimmed sizes — A and B series」で国際標準化されました。

日本の JIS P 0138「紙加工仕上寸法」は1951年に制定され、現行の1998年版は日本規格協会の表示で ISO 216:1975 に対して MOD(修正)です。A列の主要寸法はISO A列と一致しますが、後述するJIS B列はISO B列と異なるため、JIS全体をISO 216と同一とは扱えません。

A4 は国際的に広く使われています。一方、米国やカナダでは Letter が一般的で、他の地域でも制度上の採用と実際の利用が一致しないことがあります。送付先の指定や印刷環境を確認するのが確実です。

ISO 216 の A・B 列と、関連する C 系列

A・B 列と封筒用 C 系列は、次の関係を持ちます:

  • A 列: A0 = 1 m² から半分ずつ。基本のビジネス・出版サイズ
  • B 列: 丸め前の理論寸法では、A 列の隣り合う 2 サイズの幾何平均に当たる系列(例: B4 は A4 と A3 の中間)。規格表の整数mm値では丸めにより厳密な幾何平均からわずかにずれます
  • C 系列: 丸め前の理論寸法では、同番号の A 列と B 列の幾何平均に当たり、A 列の用紙を封入する寸法。かつて ISO 269 が規定していましたが、同規格は 2009 年に撤回されています。C4 や C5 は各国・業界の規格や慣行でも引き続き使われます

具体的な寸法 (mm):

表が収まらない場合は、左右にスクロールできます。

サイズ A 列 B 列 C 列 (封筒)
4210 × 297250 × 353229 × 324
5148 × 210176 × 250162 × 229
6105 × 148125 × 176114 × 162

注意: 日本国内には JIS B 列 (例: B5 = 182 × 257 mm) があり、ISO の B 列とは寸法が異なります。「B5」とだけ表示されている場合は、JIS B5 (182×257 mm) か ISO B5 (176×250 mm) かを確認してください。

なぜ米国レターサイズは違う寸法なのか

米国の標準紙サイズ Letter (8.5 × 11 インチ = 215.9 × 279.4 mm) は ISO 216 のいかなるサイズとも一致しません。比率も 11 / 8.5 ≈ 1.294 で √2 (≈ 1.414) ではありません。

Letter は米国で長く使われてきた 8.5 × 11 インチの寸法です。ASME Y14.1 は製図用紙の寸法と形式を定めていますが、一般的な事務用紙の慣例すべてを置き換える規格ではありません。

ISO A4 と Letter は寸法・縦横比が異なるため、同じ文書でも改ページ、余白、拡大縮小率が変わることがあります。PDF 自体が寸法差だけでぼやけるわけではありませんが、印刷時の自動拡大縮小によって線や文字の見え方が変わる場合があります。

補足: 米国にも ANSI A (8.5×11) から D, E まで A 列に似た展開はありますが、これは「半分にしても比率を保つ」性質を持ちません。 ANSI 系列は「同じ系列内で寸法を倍々にする」という規則は持つものの、長辺・短辺の比率が交互に変わってしまうのが特徴です。

拡大縮小コピーの倍率が一定になる実用メリット

√2 比という設計が生む実用上の利点は、丸め前の理論寸法では、隣接サイズ間の線形倍率が √2 または 1/√2 になることです。

表が収まらない場合は、左右にスクロールできます。

変換 理論上の線形倍率 代表ボタン
A4 → A3 (拡大)√2 ≈ 141.4 %「141%」
A3 → A4 (縮小)1/√2 ≈ 70.7 %「71%」または「70%」
A4 → A5 (縮小)1/√2 ≈ 70.7 %「71%」
A4 → A6 (縮小)1/2 = 50.0 %「50%」

丸め前のA系列では、隣接サイズ間の線形倍率は √2 ≈ 141.4% と 1/√2 ≈ 70.7% です。規格表の整数mm寸法では縦横それぞれの比が理論値からわずかにずれるため、1つの倍率で両辺を完全一致させることはできません。コピー機や印刷ソフトの141%・71%・50%は実用上の近似値で、機種ごとのボタン構成も異なります。

また、2 枚の A4 文書を A3 に並べる、または 4 枚の A5 を A3 に並べる場合も、ページの縦横比を変えずに面付けできます。ただし、実際の印刷ではプリンターの非印刷領域、綴じ代、裁ち落としなどを別途考慮します。この相似性は縮小面付けや小冊子印刷に便利ですが、PDF の小冊子機能そのものの必須条件ではありません。

まとめ ― 紙規格に組み込まれた √2 の数学

  • 1786 年 10 月 25 日: リヒテンベルクが、半分にしても相似になる紙の比と、すでにその比を持つ便箋について手紙に記録
  • 1798 年 11 月 3 日: フランスの紙課税法に、現代の ISO 系列と対応する複数の寸法が登場。ただし広く定着せず
  • 1922 年: ヴァルター・ポーストマンが DIN 476 として正式規格化、 A0 = 1 m² の決定を追加
  • 1975 年: ISO 216 初版。現行規格が扱うのは A 列・B 列
  • √2 ≈ 1.414: 「半分に折っても同じ比率を保つ」唯一の長方形比 (数学的に証明可能)
  • C 系列: A 列の用紙を封入する関連系列。これを扱った ISO 269 は現在撤回済み
  • JIS B 列: 日本独自の B 列で ISO B 列とは別。 B5 ノートは JIS B5 (182×257)
  • 米国レター (8.5 × 11 inch): ISO 216 と寸法・比率が異なり、米国・カナダで一般的
  • 拡大縮小 141%/71%: コピー機ボタンの謎の数字は √2 と 1/√2

普段何気なく使う A4 用紙には、「半分にしても縦横比を保つ」という数学が組み込まれています。リヒテンベルクの手紙、フランスの先行例、ポーストマンと DIN の標準化は同じ出来事ではありません。複数の歴史段階を分けて見ることで、現在の ISO 216 がどのように成立したかをより正確に理解できます。

参考文献・ソース

記事作成に関する注記

本記事は AI(大規模言語モデル)を編集補助として活用して作成しています。 公開前に編集者が内容を確認していますが、事実誤認・仕様の解釈ミス・最新情報との齟齬が含まれる可能性があります。 重要な判断を行う際は、本文中の一次ソースや公式ドキュメントを必ずご自身でご確認ください。 誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご連絡いただけると助かります。

🔧 関連ツール

📚 関連記事