
燃費表示の謎 ― km/L と L/100km、なぜ逆数で印象が変わるのか (MPG illusion)
20 km/Lから25 km/Lへの改善は、同じ100 kmを走るなら5 Lから4 Lへの変化です。一方、10 km/Lから15 km/Lへの改善なら10 Lから約6.667 Lへ減ります。どちらも「5 km/L改善」ですが、節約量は同じではありません。
燃料あたりの距離と、距離あたりの燃料消費量は反比例します。この関係を見落とすと、燃費改善の効果を読み違えます。LarrickとSollが2008年に論じた「MPG illusion」を、単位の意味から見直してみましょう。
km/L・mpgとL/100kmの意味
km/Lは1 Lで進む距離、mpgは1ガロンで進むマイル数です。どちらも燃料あたりの距離なので、同じ条件なら大きい値ほど少ない燃料で走れます。L/100kmは100 kmに必要な燃料のリットル数で、小さい値ほど消費が少なくなります。
km/L × L/100km = 100。数値そのものの積が1になる単純な逆数ではなく、100を介した反比例です。20 km/Lは5 L/100km、10 km/Lは10 L/100km、5 km/Lは20 L/100kmになります。
km/Lが2倍になればL/100kmは半分です。一方、US・Imperialどちらのmpgもkm/Lと比例するため2倍になります。
同じ改善幅でも節約量は違う
節約量は「走行距離 ÷ 改善前の燃費 − 走行距離 ÷ 改善後の燃費」で求めます。燃費と距離の単位をそろえ、比較する走行距離も同じにしてください。
- 100 km走るとき、10→15 km/L: 10 − 6.666… = 約3.333 Lの節約。
- 同じ100 kmで20→25 km/L: 5 − 4 = 1 Lの節約。
どちらも5 km/Lの改善ですが、前者は約3.33倍の節約です。元の数値が小さい範囲で同じ幅を改善する方が、同じ距離に対する消費量の減り方は大きくなります。「低燃費」は一般に消費が少ないという意味でも使われるため、大小はkm/LやL/100kmの具体的な値で確認すると明確です。
MPGの改善を消費量へ直してみる
EPAのラベル解説も、1,000マイルを走る例でこの関係を説明しています。10→15 mpgでは約33ガロン減るのに対し、30→35 mpgでは約5ガロンの減少です。どちらも5 mpgの改善ですが、節約量は異なります。
「100マイルあたりのガロン数」は100 ÷ mpgです。L/100kmも同じ考え方で一定距離の消費量を表します。ただしマイルとkm、ガロンとLが違うため、両者の数値をそのまま等しく扱うことはできません。
これは単位の選び方による理解の違いです。購入費、年間走行距離、燃料価格なども含めた判断を、燃費の改善幅だけで置き換えることはできません。
米国と英国のMPGを区別する
ここでは1 mile = 1.609344 km、1米液量ガロン = 3.785411784 L、1英ガロン = 4.54609 Lを使います。米国の乾量ガロンは使いません。
- mpg (US) → km/L: 値 × 1.609344 ÷ 3.785411784。
- mpg (Imperial) → km/L: 値 × 1.609344 ÷ 4.54609。
- km/L → mpg: 値 × 対象ガロンのリットル数 ÷ 1.609344。
同じ燃費ならImperial mpgはUS mpgの4.54609 ÷ 3.785411784倍、約1.20095倍です。30 mpg (US)は約36.0285 mpg (Imperial)になります。逆にUSの値はImperialより約16.7%小さくなります。
国名や数字の大きさだけで種類を推定せず、元資料のUS・Imperial・UKという記載を確認してください。
単位換算と試験条件の違いは別
カタログ燃費は所定の走行条件で測った値です。WLTC、JC08、EPAなど異なる試験条件の数値は、単位だけをそろえても同じ条件の比較にはなりません。旧モードから新モードの燃費へ、一定の係数で換算することもできません。
本記事では特定車の別モード燃費を推定しません。元資料の試験名、車両仕様、年式、走行条件を確認してください。実際の消費量は利用条件によっても変わります。
EVのkm/kWhとkWh/100kmにも同じ反比例の関係がありますが、液体燃料の燃費とは物理量が異なります。MPGeもガソリン相当のエネルギーで比較する別指標です。
燃費換算ツールで確認する
NanTooの燃費換算ツールでは、km/L・L/100km・mpg (US)・mpg (Imperial)を一括表示します。0より大きい半角数値を100文字以内で入力し、小数・指数表記を使えます。桁区切り、全角数字、0・負数は受け付けません。
入力単位を変更すると、入力値を保持したまま新しい単位として解釈します。結果は最大12有効桁の近似値で、極小・極大値は指数表示、表現できない結果は「範囲外」です。表示値を再入力した場合には丸め誤差が加わります。
燃料節約量を比べるときは、同じ距離に必要な量へ直すことが出発点です。単位の定義と試験条件をそろえたうえで、数値を読み比べてください。
参考文献・ソース
記事作成に関する注記
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